古津軽の伝承料理
弘前市
津軽地方の農家は、お米づくりだけではなく、雪に閉ざされる冬の備えとして、野菜・果物・山菜・木の実などを干したり塩漬けや発酵させて保存食もつくっています。
古津軽の伝承料理は、雪深い地域ならではの工夫を受け継いできた昔ながらのお母さんの味です。
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1 伝承料理の成り立ち
お米、発酵、塩漬け、
そして“ばっちゃ”
「何もないけど、まま(ごはん)だけは腹いっぱい食べてけろ」と言われるほど津軽は、お米がたくさんとれます。江戸時代から農地改革に力を入れていたことや、白神山地と岩木山が強風や大雨から津軽平野を守ってきたとも言われています。各農家では、自慢のお米を使ってお客さまをもてなすために、発酵食品や甘みたっぷりのスイーツなど、冬にも出せるご馳走(保存食)を作りました。津軽の伝承料理は農家のおもてなしの心から始まりました。
田植えの『こびる』は
元気食
昔、田植えは家族や親戚、仲間たちなどが集まった結(ゆい)と呼ばれる共同作業で、夜明けから総出の作業でした。忙しい日は、農作業をしながら1日5食になることも。男たちは力仕事を頑張り、女性らはごはんをお腹いっぱい食べさせることに精一杯でした。10時休憩の「こびる(小さいお昼の意味)」では、砂糖を入れた甘い赤飯や「ねりこみ(甘い野菜の煮物)」「干し鱈の煮つけ」を食べました。甘いおかずが多いのは、「甘み」が力の源と寒さ対策となる「元気食」だからです。
干したり漬けたり
津軽の冬は雪に閉ざされるため、雪が降る前に、穀物や野菜、果物、山菜、木の実などをとれるだけ収穫して、干したり漬けたり、糠や麹、酒粕を使って野菜や魚を漬け込んで保存食を作ります。もち米と魚の「飯ずし」は代表的な発酵食品です。漬物文化も盛んで、村々には麹屋があり、各農家には漬物専用の小屋もあって、きゅうりやなすの奥漬(おくづけ)、塩漬けしたわらびや山菜でいっぱいでした。味噌も自家製が当たり前で、かっちゃ、ばっちゃが自慢の「手前味噌」を仕込んでいました。
祭りとお餅、時々スイーツ
もち米も盛んに食べました。秋には、収穫したばかりのもち米で餅をつき、知人に配って実りを喜びました。
師走には毎日のように餅をついて、年を迎える祭りをしました。12月1日はお岩木さま、5日はえびすさま、8日〜10日までは薬師さま、大黒さま、稲荷さま、12日は山の神さまと、年の暮れまで餅のお供えが続きました。また、時間があると、もち米で飴や「うんぺい」などのスイーツを作りました。
次世代につなぐために
「津軽あかつきの会」では、女性たちが世代を越えてグループを組み、料理を作っています。素材選びや下ごしらえ、作り方やコツなど秘伝のレシピを次世代に残すためです。最年長のばっちゃ(おばあさん)がリーダー、技を持つかっちゃ(母さん)が味付け担当、アシスタントのあっちゃ(姉さん)は勉強しながら経験を積んでいます。
いろいろな伝承料理
時代が変わっても古びれず色褪せない魅力を持った津軽の伝承料理を、後世に残し、作り食べ継がれてほしい。日本ふるさとごはん協会では、津軽に暮らす方々と一緒に、素材や調理法あるいは料理名に地域性を持つ料理を「津軽料理遺産」として認定。特に料理が多いお米、鱈、山菜の料理をはじめ、調理法別に130種類以上の料理をアーカイブサイトの公開を通じて、地元の方だけではなく観光で訪れた人にも、この地で津軽の味を食べてもらうことを目的に津軽の食文化を紹介しています。
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津軽料理遺産
https://tsugaru-ryouriisan.com/
- 他の定番料理↓
- ● 甘〜い茶碗蒸し…鳥のささみ・栗の甘煮・きのこ類・根曲竹・色こんにゃく・海老など具だくさんで、ほんのり甘い味つけが特徴。
- ● 豆漬け…在来種の毛豆を皮ごと漬け込んだもの。
- ● 葉くるみ漬け…高菜や白菜、大きな紫蘇の葉でくるんで漬けた漬物。
- ● いかと玉菜漬け…いかとキャベツを使った古津軽定番の浅漬け。
- ● 一升漬け…南蛮(青唐辛子)と醤油、米麹を各一升ずつ漬け込んで熟成させた万能調味料。
- ● ほやとみずの水物…新鮮なほやの身とシャキシャキのみず(ウワバミソウ:東北の夏の山菜)を昆布出汁で水物にした、古津軽の短い夏には欠かせない料理。
- ● さもだしの塩辛…さもだし(ナラタケ)は津軽で一番人気のきのこ。塩蔵品を塩抜きし、塩辛昆布で味つけしたご飯の友。
- ● あんこうのとも和え…あんこうの身をすりつぶした「あんきも」で和えた美味。お酒によく合う古津軽のあんこう料理の定番です。
2 伝承料理を味わう
高岡の森
古民家カフェ
「山の子」
築80年以上の古民家を改修したカフェ。「山の子けの汁ご膳」は、けの汁と青森県産食材を使った無添加の発酵料理にこだわっています。津軽焼の食器やりんごの木で作られた箸など、店内は青森テイストでいっぱい。すぐ近くには、日本刀に萌える“刀女子”必見の「高岡の森弘前藩歴史館」があるので、高岡の森は発酵女子や刀女子、歴女におすすめのエリアです。
- 高岡の森 古民家カフェ 山の子アクセス
- 営業時間/11;00~17;00
- 定休日/火曜日、第1・3月曜日
- Tel. 0172-26-8785
- 青森県弘前市大字高岡獅子沢2-2
JR弘前駅より弘南バス(枯木平線・高岡経由)
「高岡バス停」下車、徒歩約1分
食事もお酒も美味しい
「郷土料理 しまや」
昭和43年創業の小料理屋。カウンターの大皿に季節の食材を使った本物の郷土料理が並びます。料理はもちろん、女将さんとの会話を楽しみに全国からお客さんがやってきます。
- 郷土料理 しまや アクセス
- 営業時間/15:00~22:30(L.O.22:00)
- 定休日/日曜
(※営業時間・定休日は変更となる場合があります) - Tel. 0172-33-5066
- 青森県弘前市大字元大工町31-1
弘南鉄道大鰐線「中央弘前駅」徒歩約10分
民家で味わう津軽の味
「津軽あかつきの会」
津軽の伝承料理を次世代にバトンするために30名ほどの農家のお母さんたちが集まりました。お盆に並ぶたくさんの小鉢料理は、色とりどりで栄養豊富。農家さんのお家で味わう懐かしい家庭料理は、おばあちゃん家に遊びに行った気分になります。食事希望の方は、下ごしらえのために4日前までの予約が必要です。※活動は木、金、土、日の12:00~14:00 1食1,500円~ 4名から受付、4日前までに要予約。
- 津軽あかつきの会アクセス
- Tel. 0172-49-7002
- 青森県弘前市大字石川家岸44-13
弘南鉄道大鰐線「石川駅」徒歩約5分